新税の「出国税」は日本人も対象に、一部報道の「1000円」は未確定、航空券購入時に同時徴収へ、財源規模は「数百億円」 / 2017年11月 2日

観光庁は2017年10月31日、有識者による「次世代の観光立国実現に向けた観光財源のあり方検討会」第6回会合を開催し、検討会としての取りまとめ案を議論した。

観光庁によると、出国旅客に対する「税方式」、外国人旅客だけではなく日本人旅客も対象とする考えで一致。確保すべき財政規模は「年間数百億円規模」とした。徴収方法は、PSFC(旅客サービス施設使用料)など既存の仕組みのある航空券へのオンチケット方式を基本とする考えで、船舶については精査する。

ただし、観光庁は、1人当たりの負担額について1000円程度と一部報道が出ているものの、「本日の時点で水準をまとめるに至っていない」とし、検討会では具体的な数字が出ていないことを強調。11月中にとりまとめる検討会の提言に、「負担額と徴収方法を何らかの形で盛り込むように調整する」と述べるにとどまった。

時期については、検討会で一致した「できる限り早く」の方針で税方式での調整が進んだ場合、年末の税制調査会で導入の可否や時期が判断され、2018年度の税制改正大綱に盛り込まれることになる。

「年間数百億円」の根拠、充当する施策とは

今回、検討会で初めて財政規模として「数百億円」が出された。これは「明日の日本を支える観光ビジョン」関連の予算を参考に想定したもの。同予算では、観光庁は約200億円、他省庁の関連施策を含めると約700億円に上る。「数回」を辞書で引くと「2、3?5、6回」であることから、数百億円は200?600億円程度と考えていいだろう。

これを踏まえ、今回、税としての徴収の考えが示されたことで、会合後の記者説明会では、「観光施策への純増ではなく、現在の予算に充てられ、結果的に財政再建に使われることはないか」「使途を観光施策に限るためのスキームは盛り込まれるのか」などの質問があった。

これに対して事務局は、「観光政策を進めるための財源確保の議論」と強調。観光施策の幅の広さを考慮する必要性を示しつつ、「政府として必要な措置を講じるという方向性を検討会の最終的な取りまとめに出していくことになると思う」と語った。

なお、中間とりまとめは、財源確保の目的を示す「はじめに」と「必要性」、「確保策」、「提言」で構成。これまで、「必要性」「確保策」「使途」で議論してきたが、「使途」は「必要性」のなかで示すのが適当と判断した。

「はじめに」の部分では、すでに示されている訪日4000万人、6000万人の政府目標達成に加え、増大する訪日旅行需要と地域住民の生活保全との両立を目指す持続可能な観光推進も追加。確実な目標達成と、将来にわたって必要な観光施策の安定的な財源確保といった2つの観点で、観光財源の検討を行なったことを示した。

また、「必要性」で示す「使途」では、財源を充てる施策には「負担者の納得感」、「先進性の高さと費用対効果」、「地方創生への貢献」の3点を勘案することを提示。その上で、(1)地域固有の文化、自然等を活用した観光資源の整備の深度化、(2)ICT、ビッグデータ、先端技術の活用による我が国の魅力発信のレベルアップ、(3)最新技術を活用したCIQ体制・保安体制・チェックイン手続きの強化・迅速化、を示した。

これ以外にも施策案は出されているが、委員の「観光の幅広さを踏まえると、使途を絞り過ぎるのはよくない」との意見を考慮し、3案の例示に留めた。

なお、今会合では、中間取りまとめ案の確定はできずに調整中。今後、検討会は開催せず、各委員への意見聴収と確認を行ない、11月中に中間とりまとめとして提言を出す。

中間取りまとめ案の概要は、観光庁のホームページに掲載されている。