仙台空港、全国初の民営化で何が変わる? / 2016年7月 9日

7月1日に民営化した宮城県の仙台空港。国が管理する地方空港の中で初めて完全民営化された。滑走路の維持管理などの業務を引き継いだのは、東京急行電鉄<9005>など7社が出資した新会社「仙台国際空港」で、民間のノウハウを活かして営業力を強めると同時に着陸料を引き下げるなどし、格安空港会社(LCC)を中心に路線数や便数の増加を図る。

 仙台空港はこれまで運営の主体が、空港ビルと貨物ターミナルは宮城県が出資する第3セクター、滑走路は国とそれぞれ別であったが、民営化後はいずれもすべて同じ民間企業が運営する。一体的な運営により効率化を図り、民間ならではのノウハウで空港を活性化するというのが民営化の狙いだ。

 空港の利用者を増やすためには、路線の拡大が不可欠。運営を引き継いだ新会社は、新たな路線の誘致に力を注いでいるが、他の空港も路線の誘致に取り組んでいるのが現状で、一筋縄ではいかない。そこで、新会社は、着陸料をはじめとする空港会社が空港に支払う様々な料金を引き下げて、路線の誘致を図っている。

 さらに、ボーディングブリッジ(搭乗橋のない新たな搭乗口)の使用料を払わずに済むように、LCC向けにボーディングブリッジを建設する計画があるという。44年度に、年間旅客数を14年度の1.7倍の550万人、貨物量を4.2倍の2万5,000トンとする目標を実現するためには、LCCを中心とした路線数・便数の増加が鍵となる。

 民営化を前に、週4便だった韓国仁川便を6月28日から毎日運航に増やし、同月29日には台湾のLCCである「タイガーエア台湾」が台北・桃園便を週4便で就航。東北の美しい風景や食べ物は台湾でも人気で、客足の増加が期待できそうだ。

 また、空港ビルの収入を増やすべく、今年10月から空港ビルの大幅改修に着手し、魅力的な土産物店やカフェを利用客の動線に配置する予定とのこと。

 民営化構想が持ち上がったのは、2011年12月。東日本大震災からの復旧と収益向上への打開策として、宮城県が仙台空港を民営化する方針を打ち出したのだ。12年2月に官民による民営化検討会が初めて開催され、同年9月の3回目の検討会では日本初となる「民間運営による地方中核空港」を目指すと表明した。

 東日本大震災の津波で、甚大な被害を受けた仙台空港。復興のシンボルとして、明るい続報を期待したい。